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Scape

 Scapeはわたしが撮影するポートレイト写真である。

 モデルとなる人たちが住む部屋をカメラ・オブスキュラにし、この投影装置を用いてモデルの姿を映し出す。そうして映し出されたモデルの姿を、わたしが部屋(カメラ)のなかに入りこみ撮影した。

 カメラ・オブスキュラは紀元前から知られる原始的な映像の投影装置だ。とてもシンプルなつくりで、壁に設けられたひとつの孔がレンズの役目をし、天地左右が反転した像が暗い部屋のなかに投影される。

 ただの2cmの孔が映し出す不鮮明な住人の姿。その姿にピントを合わせ、露光時間を30秒にしてシャッターを切る。暗い部屋で存在感を増す、家電製品やコンセントの灯り。他人の匂いに満たされた暗い部屋。撮影が終わるまでのそのあいだ、わたしは暗闇にじっと息をひそめる。

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